水戸興信所 探偵よろず日記



画像はイメージ



依頼者 夫 河田晴男 (53)住宅販売会社 勤務 (元大手電気メーカー課長)
対象者 妻 河田千代 (45)パート
家族 夫の母、高校の娘と同居 仮名

調査目的 妻の浮気調査

相談概要
私の留守中に、妻が男を家に入れて浮気している。
証拠を撮るため監視カメラを庭、裏の出入り口、室内などにセットしたがうまく作動しなかったり妻に見つかったりで失敗した。
ある夜遅く、車の音で私の帰宅に気が付いた男が、下半身裸のまま勝手口から裏山に逃げる姿を目撃した。
母と娘がおきている時間は裏山で遊ぶらしく、人が寝たような形で雑草が踏み倒されている。
妻は、私が人工透析のため夜中に帰宅する日を、二階の部屋の電灯を点けておいたり、色のついた手拭いを干し竿にぶら下げて男に合図している。

このようなことが10数年続いている。悔しくて、留守中にセックスできないように本格的な革製の貞操帯を妻に着用させた。帰宅後貞操帯を脇にずらして調べると、すでにセックスをした後らしく精液が流れ出る。

夜中に外出できないよう寝室のドアを釘で打ち付け、妻と自分の手を紐で結んで、朝まで起きていようと頑張るのだが、体調が悪いためぐったりしていつのまにか熟睡してしまう。妻は、この隙に紐を解いて裏山に忍び出て待っている男と遊んだり、家に入れて性交している。朝、妻の股間を調べると精液でべとべとになっている。貞操帯をずらして遊ぶのだ。

妻を男から隔離するため、K市とH市の兄の家に一週間交代で泊まりに行く。男はそこまで追ってきて家の周りを朝まで走り回って妻に合図をして隙を狙っているいる。週末は特に危険なので、他県にドライブしてモーテルに逃避する。男は車を代えてそこまで追いかけてきて、私たちの隣の部屋に入るのだ。

妻は、複数の男と遊んでいる。新婚の当時は真面目な妻だったのに私が勃起不全になってから人が変った。

公休日は、山に隠れて家の前を通る車をチェックしている。これがその車番のリストです。この5台は朝、夕方などに通行するのだか、私が休みのため妻が合図のタオルをぶら下げないので、男たちは家に入れず様子を見て通過するだけだ。

私はその男らに殺されるか、逆に殺してしまうか追いつめられている。
男と妻が密会している証拠を撮って男を裁判にかけたい。助けてほしい。

調査結果
奥さんは、町へパートに出て夕刻、高校の娘さんを電車の駅で迎えて一緒に帰宅するのが日課。県西の山間部のこの地域は夜間イノシシやタヌキの目が光るのみで車の通行は途絶え往来する人はいない。

探偵の眼
夫の数々の奇行と浮気疑惑の追及で奥さんも苦しんでいると思われ気の毒です。
河田さんは元大手電気メーカーの技術系のサラリーマン。20数年前バブル崩壊のときリストラされ早期退職組に入った。30歳で糖尿病と診断された。勤勉な性格で仕事の無理が災いして、肝臓機能が悪化し40歳代で人工透析を始めた。勤務先まで所要時間は車で1時間半。退勤後、週に3日病院に立ち寄って透析を行う。1回の透析時間は4時間。帰宅時間は12時近くになる。「通勤退勤の時間と透析の痛さが苦痛だ」と元気なく訴える。

30歳代で性交が不能になりあらゆる治療と精力剤などを飲用したがダメだった。妻が性的な不満を言わずとも、男として役立たずの自分に強いコンプレックスに苦しんだ(本人談)。

リストラで新しい慣れない職場でのストレス、勃起不能の負い目などで長い間に心理的に追い詰められていったと思う。バサついた白髪交じりの毛。カサついた皮膚。うつろな表情が痛々しい。
家に忍び込むリストアップした5台の車の男が怪しい根拠は何?と尋ねると、「朝晩通るから」という回答だった。追い詰められた河田さんは自宅前を通る車を、妻が遊んでいる男の車、だと思い込んでしまうのだ。

こころの健康シリーズ-日本精神衛生会-の 種智院大学教授 小澤 勲 先生は 嫉妬妄想 について次のように解説しています。

配偶者が浮気しているという妄想です。これはどちらかというと男性に多いようです。亭主関白で、お山の大将的に家庭で君臨してきた人が典型です。彼らの妄想は、信頼や愛が裏切られたというより、「俺のモノを盗られた」という雰囲気に満ちています。その意味では男のもの盗られ妄想といってもよいでしょう。彼らは妻にいつも傍にいることを求め、一刻でも視野から外れると「男に会いに行っていたんだろう」と怒り出し、耐えきれなくなった妻が逃げ出すと、さらに妄想が強まるという悪循環が生まれるのです。

次に、配偶者・恋人に対して異常に嫉妬深い「オセロ症候群」を解説した記事を紹介します。

嫉妬
自分よりも優れて映る者や、自分の持っていないもの、自分から見てよく思えるものを持つ者に対して、それを不快に思う感情・心理。
嫉妬には、いわゆる愛情嫉妬と志向性嫉妬とがある。後者は、地位、名誉、声望などを巡っての嫉妬であるが、嫉妬妄想として取り上げられる例は、前者の愛情嫉妬に関するものが大部分である。嫉妬は、相手を愛するゆえに生まれるのではありません、見捨てられる不安、一人では生きていけないという、孤独への恐れから生まれます。

オセロ症候群
オセロ症候群とは、別名「嫉妬妄想」と言い、自分のバートナーが浮気していると思い込んだり、浮気をしていないことを確認しようとしてパートナーを追い詰めてしまう症状。
恋愛の苦悩に身悶えるシークスピアノ歌劇「オセロ」から名づけられた。

 合理的な証拠がなくても相手の浮気を疑い嫉妬してしまうという疾患。
 配偶者(恋人)に対する具体的根拠のない強い嫉妬心と合わせて、浮気(不倫不貞)に対する妄想が特徴的にみられ、いつも「相手から自分は裏切られるのではないか・相手から惨めに見捨てられるのではないか」と言う不安を抱いている。
 必死になって「相手の浮気・不倫の証拠」を探し出そうとし、更に「相手の浮気・告白」を何とかして引き出そうと試みますが、それが失敗することで安心感(心理的補償)をえているという側面もある。

編集後記
この記録をブログに書き込みながら20数年前のことを思い出しました。探偵は、基本的に依頼者の訴えを「真実のできごと」として仕事を受けます。
パートの仕事を終え、駅で学校帰りの娘を待つ母。帰宅途中スーパーで買い物をする母と娘の、もの悲しげな姿が鮮明に蘇りました。
調査三日目、この家に男が入ることはあり得ないと確信しました。

依頼者は、オセロ症候群の症状に該当する部分がずいぶんあります。依頼者に「奥さんは浮気などしていない」、「あなたは心が疲れているから精神科(当時は心療内科ではなく、精神科が多かったです)へ奥さんと一緒に行って相談するように」と何度も言ったことを思い出しました。

現在どうしているのかとても気になる人です。

「必死になって、配偶者の浮気・不倫の証拠を探し出そうとし、更に告白を何とかして引き出そうと試みますがそれが失敗することで安心感を考えているという側面もある」。
3年~5年断続的に配偶者の調査依頼をしてくる夫人(夫)がいます。「合理的な証拠がなくても配偶者の浮気を疑い・・それが失敗することで安心感がある。」この場合、ご婦人が多いです。次回に投稿する「嫉妬妄想の老婦」にその事例を書く予定です。

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