水戸興信所に寄せられる離婚と浮気のQ&Aを紹介しています。
[相談28]
親権者の指定
私と夫は結婚して10年になりますが、この度離婚を決意し、夫も同意しました。ただ、二人の間には13歳・長男と5歳・長女の子どもがおり、双方とも親権を主張しており、話はつきそうにありません。離婚する場 合、親権者はどのような方法で、また、どのような基準で決めることに なるのですか。
[答え28]
家庭裁判所の審判例などにおいて、父母のいずれが親権者として的確性を有するかを判断する場合の具体的要因を見ると、
父母の側の事情として
監護に対する意欲と能力、健康状態、経済的・精神的家庭環境、居住・教育環境、従前の監護状況、子に対する愛情の程度、実家の状況、親族・友人の援助の可能性、
子の側の事情として
年齢・性別、兄弟姉妹の関係、心身の発育状況、従来の環境への適応状況、環境の変化への適応性、子の希望、などの事情を総合的に検討して判断されます。では、審判例の具体的な判断基準を検討します。
(1) 監護の継続性の基準
真理的な結びつきを重視し、子を現に養育している者を変更することは、子の心理的な不安をもたらす危険性があることから、子に対する虐待・遺棄放置など子の福祉上問題となるような特別の事情のない限り、現実に子を監護しているものを優先させるべきであるとされています。
(2) 母親優先の基準
乳幼児については、特別な事情のない限り、母親の監護を優先させるべきであるとする考え方があります。この基準はこの幼児期における生育には母親の愛情が不可欠であるとするものです。
ただ、この基準に対しては、母親が幼い子の養育に適していると一概に言えるものではなく、むしろ、家庭における父母の役割が変化しつつある現代においては、硬直化した見解である。むしろ、子が誰との間に心理的絆を有しているのか、父親、母親のいずれに親権者としての的確性があるのかを事案ごとに具体的に版出すべきであるとの指摘がされています。
(3)子の意思の尊重
16歳以上の未成年の子について、親権者の指定、子の監護に関する処分について裁判をする場合は、その未成年の子の陳述をきかなければならないと規定されています。
実務上は、15歳以下の子どもであっても、子の気持ちを傷つけないやり方で、子どもの意思を確認しているようです。未成年者の自己決定権は可能な限り尊重すべきであり、15歳にこだわることなく、家庭裁判所調査官の専門家等の調査により子どもの意思の聴取を実地すべきです。
(4)兄弟姉妹の分離が適当か
兄弟姉妹の不分離を原則とする判例があります。可能な限り、兄弟姉妹の関係を切ることのないようにすることは必要ですが、兄弟姉妹の年齢・関係、それまでの監護状況(一緒に育ったのか、別々かでは異なる)、子どもたちの意思の尊重など総合的に判断します。
(5)離婚に際しての有責性
離婚に際して、有責である配偶者は親権者としても不適当であるとする見解があります。これは、父母いずれも親権者としての適正について甲乙つけがたい場合に、有責の大小によって決めるのが公平であるとする考えです。しかし、家族を遺棄したとか、異性と同棲しているなどの事情は、親権者の的確性を判断するマイナス要因として子どもとの関係で判断されるべきであり、夫婦間の問題における有責性を子どもの親権者を決定する際の基準として考えるべきではありません。