仕事を理由に父親が養育を母親に押し付けている場合、離婚や単身赴任などで実際に父親がいない場合、父親がアルコールやギャンブルにおぼれている場合、嫁姑間にもめごとがあっても夫は見てみぬふりで放任的中立を決め込んでいる場合などです。また、母親自身が、問題を抱えた両親による機能不全の家庭に育って精神的に余裕がなく、心配性でいつも不安に駆られているという傾向もあります。幸せいっぱい楽しそうに生きている母ではなく「幸せ薄い女性」になってしまっているのです。
父性にかけた父と、過剰な母性で子どもに密着しようとする母の間で、子どもは何らかの形でそのゆがみの影響を受けます。そのゆがみが、拒食症や過食症などの摂食障害に表れたり、家庭内暴力に表れたり、子どもの境界性人格障害などの症状となって表れるのです。
子どもを健全に育てる秘訣は、父親も母親も、適切な父性と適切な母性を保つことです。愛情をたっぷり受けてきた、現在もうけている、満ち足りた母親に育てられる子供はしっかりと心が安定します。母親が幸福感にあふれるためには、力強い夫のリーダーシップと暖かい思いやりが欠かせません。
団塊の世代の二世たち。その問題の底流には父親不在という共通の問題が横たわっています。東京女子大学の林道義教授は「父性の復権」(中公新書)のなかで団塊の世代は高度経済成長のなかで浮かれ、「無気力を培養し,父性を空洞化し」てきた結果、正しい父親像をつくれなかった・・略。
以上、「あなたの心が壊れるとき」高橋竜太郎、「なぜ心が病むのか」町沢静夫
より引用。
1967年(昭和42年代〜)。ベビーブームの団塊の世代は、20歳を超えた社会人となっています。
各精神科医が指摘している、昭和40年代から今日に至る間に問題視されている人格障害者が顕著になったのです。
団塊の世代の親たちはどうしてこんなに指弾されるのでしょうか。それは、時代背景も考える必要があると思います。1947年(昭和22年)日本国憲法が施行され、戦後民主主義といわれる、自由、平等、平和の世の中になりました。天皇主義や家族制度を否定、アメリカ的な自由平等思想を原則とした民主教育は若い世代を良くも悪くも洗脳したのです。
その結果、戦後ベビーブームの子供たちは大学生の年齢になると、学生運動がピークに達し、全共闘による日大闘争、東大安田講堂攻防戦、国際反戦デーなど機動隊との攻防で死者の出るデモを繰り広げました。彼らは、既成のものや確固としたものを嫌い、伝統的な型を崩すことや否定すること自体に意味を見出した。堅実な生活は嫌われ、ヒッピーに見られるような放浪と場当たり的な生き方が求められ権力や富や支配や戦争と名がつくだけでやみくもに否定しました。高度経済成長期の「富が全て」という狂乱の時代背景もあります。
民主主義の精神を履き違えた団塊の世代の親たち。団塊の世代の象徴全共闘が「団体交渉」と称して大学の総長や教授たちを吊し上げる場面がテレビで連日放映されました。
この親たちが家庭を持ったのです。子供たちはクラス全員が高校進学を目指し、より難関高を選択するする時代になっていました。親は、子供にスパルタ教育を押し付けるか、逆に子供に厳しいことを言わないで放任する。子供にこびるような態度まで示す。家庭から逃げる。このような親に育てられた団塊二世はなるようにして社会の問題児となったのです。この悪循環を断つために「あなたの心が壊れるとき」の単行本に、呉 智英(評論家)の寄稿を掲載します。
「こんな時代に生きるには」
・・・こうした現代の病理に立ち向かうには、一つには、それをこじらせた場合は遠慮なく精神科医の扉を叩いて助けを請うことが必要だろうし、一つには、自分の生き方を問い直すことが重要だろう。この後者は、日常の場面でできることだし、また、歴史や社会の潮流とは別に、個人でできる唯一最大の治療法かも知れない。
夫も妻も生まれ育った家庭環境と個人的な資質によって性格が違うのは当然なのに、家庭内でも誤解され、職場でも生きづらい。たとえばアスペルガー症候群に代表される発達障害と思われる人は、どこにでもいるし、「うつ病」などは誰でも体験しうるものであることを理解してもらいたいです。
多くの団塊の世代の人、その子供たちも戦後民主主義の大きな渦にのまれて人生を狂わせました。その結果、人格障害者が世に出て「女子高校コンクリート詰め殺人事件」のような事件が起きました。現在も事件や家庭内の紛争が絶えません。今、その原因が究明され、治療法や対処法も確立しています。
配偶者の一方が「発達障害」や「心の病」で苦しんでいることも知らずに、「変な人間」と決めつけてそれがもとで退職や自殺、引きこもり、アルコール依存、ギャンブル等にはしり、やがて家庭崩壊や離婚という結末になった場合、その家庭は悲惨です。
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