探偵事務所に夫の浮気について相談の電話や訪問してくるご婦人方の表情は深刻です。
以下は、妻が夫の調査依頼を決断した原因の数々です。
肌身離さない携帯電話・不信なメール・手帳に暗号や記号が書いてある・電話使用料が増えた・背広やワイシャツに香水の匂い・助手席に長い髪の毛が落ちていた・外泊、深夜帰宅が多くなった・財布にラブホテルやファミレスのレシートが入っていた・・・。
このように直接目にする「物証」や夫の態度、言動の変化に気付いて密かに夫を探偵するのですが、自分の手に負えないことを知って探偵事務所に恐る恐る電話や訪問してきます。妻たちが説明する夫の言動や物証について私たちも「旦那さんは100%クロですね」と確信をもって応えられる相談が大半なのですが、「これ」といったものがなくても「夫は浮気していると思います」という相談者がいます。この婦人方に[どうしてそう思うのですか?」との質問に、「私のカンです」という答えが返る。そして、その依頼を受けてやってみると99%不貞の事実があるのです。残りは、被害妄想の人たちです。
「女性のカンは凄いな~・・・。夫婦をしていればなんとなくカンで分かるのだろう」と勝手に解釈していたのですが、「なんとなくカンでわかる」ことを科学的な
根拠として取り上げたとてもおもしろい特集がありました。下記の記事はそのシリーズの①だけ保存されたもので他の記事は紛失です。
読売新聞 2003年(平成15年)4月1日 科学欄
なぜなの? 男と女 ①
浮気を見抜く「カン」って?
「何を根拠にそう言うんだ」。内心の動揺を押し隠して、夫は努めて平静に言う。妻は夫を見すえ、ここで伝家の宝刀を抜く。「女のカンよ!」
男性たちは考え続けてきた。「女のカン」はなぜ、こうもたやすく男のうそを見破ってしまうのか・・・。
大いなる疑問に、こんな説が出ている。「女のカン」は進化の道筋で生まれた能力ではないのか。
生物は自分の子孫を残すために生きる。自分の遺伝子を世代を超えて継承させたい。人間も、その目的の実現に有利な能力を必死に発達させてきた。
自分の子孫を残すには、男性はより多くの女性と接する戦略が有利だ。一方、女性は、産んだ子を確実に育てる道を選んだ。「そのために一人の男性を選び、自分と子を守ってもらう戦略をとったのです」。長谷川寿一東大教授の説明だ。現代なら託児所がある。夫に育児休暇を取ってもらうこともできる。だが過去、女性には、男性に頼るしか方法はなかった。
子の父親となる相手は本当に誠実だろうか、自分と子の面倒を長く見てくれるだろうか・・・。10カ月の妊娠という多大な「投資」もするのだ。見誤っては大変。
かくして女性は、男性の言葉や表情、しぐさに敏感に反応し、「男の本音」を見抜く能力を磨くことになった_進化心理学ではこういう説が有力で、常識的に考えてもそう思える。
「女のカン」をさらに解き明かせないものか。
女性の言語の理解力について、脳の使い方の違いから迫ったのが、産業技術総合研究所だ。女性と男性に朗読を聞かせ、脳内の血流を調べてみた。男性は左脳だけを使うが、女性は左脳と共に感情などをつかさどる右脳も使う傾向が高いことが分かった。
女性の脳は男性より10パーセントほど小さいが、左脳と右脳とを結ぶ「通信ケーブル」(脳梁・のうりょう)の大きさには差がない。「女性の通信ケーブルは高性能で、短時間に左右の脳を使い、情報を吟味できるようです」。北沢茂主任研究員(現・順天堂大教授)は言う。
独のマックス・プランク研究所の実験では、「言葉の裏」を読むのは、男性よりも女性の方が四倍も早かったという結果が出た。
結びに、英国の著名な作家、キプリングの言葉を紹介したい。「女の推量(カン)は男の確信よりも、ずっと確かである」
世の中には、わからないことが多い。私たちが「不思議だ」「なぜなの」と感じる疑問に科学はどんな答えを出してるのだろう。シリーズの始まりは、男と女の「なぜ」から。
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