前回の被害妄想の老婦1 は 相談内容について、婦人の室内で起こる様々な現象、日常的に受けている被害状況を婦人の口述を筆記したものです。アパートの住人とか周辺の人たちに監視されている状況を克明に記録しました。
被害の内容として、「留守中に家の中に何者かが入っていたずらをする」、「周囲の人が私を監視している」が多いですが、これはこの老婦に限らず、心が病んでいる人たちの相談のなかに必ず出てくる項目です。このような被害を受けていると訴える人々は老人世代ばかりではなく30歳代から60歳代までずいぶんいるのです。
【吹き芽どき】草木の芽が出始める時期のこと、3月~4月 【刈芽どき】【刈穂どき】稲穂を刈る時期のこと、9月。
昔から、「この時期には自律神経が不安定になって来院し針きゅうをする患者が多い、そして自殺者も多いのはこの時期だ」と、針灸院経営者の感想です。
神経医学界の統計でも自殺者は4月5月が一番多いデータがあります。
古くから探偵業をしている業者さんなら、春3月4月の季節になると、精神的に病んでいると思われる人からの相談が急増して対応に追われた経験が多くあったと思います。ここ20年来は「心療内科」という診療科目を表示する病医院が多くなり、うつ病も一般的な病名になって「神経症」を自覚、他覚(家族などに指摘される)する人はあまり抵抗なく心療内科を受診できる時代になりました。心療内科が無かった時代は、「精神科」で受診しました、しかも一般の病医院にはなく精神病院に通院していました。心療内科への通院が一般的になったため、自律神経失調症から精神的に悪化してしまう神経症まで進まないで改善・治癒していく人が多くなった。そのため近年は探偵事務所に精神が疲れている人たちからの相談が激減した、というのが筆者の推測です。
では、なぜ心が病んでしまった人たちが精神科に行かないで探偵事務所に相談にくるのか?
この人たちは自分の心が病んでいるとは考えていないので、病院へは行きません。他人から(正体が分かっている人又は、何者か不明)の有形無形の攻撃・嫌がらせ
について、まず、自分で防衛対策を講じるのですが効果がないので市民相談室に行きます、次に警察署~ 裁判所~ 弁護士事務所~ どこへ行っても”キチガイ”扱いにされ、たらい回しにされてたどり着いたのが探偵・興信所だそうです(相談者・談)。「何で?ここに」の質問に、「探偵さんは忍者みたいに正体を隠して見えない相手を突き止められるから」と、皆さんは異口同音に言います。
探偵事務所でも多忙だったり、このような人と関わりたくない場合は門前払いしています。私は、この人たちはどうしてこうなったのか、その環境とか過程が興味があるので、電話なり面談で相談者の話すことをすべて聞き取ることにしています。相手の話すことに相槌したり、同情して慰めたりしながら聞き終わると、明るい表情で「すっきりしました。助かりました」と言って帰られる人も多いです。中には、仕事として依頼を受けることもあります。
小林さんは自信過剰の性格を自認していた。誰でも呼び捨てにするなど尊大な振る舞いが垣間見えた。今日までさまざまな人たちと対立してきたのだろうと思う。
老境に入っても攻撃的性格は旺盛で、周囲の人を敵視ばかりしている。そのために親しい人はおらず、孤立し、孤独感からうつ状態になったのか。
相談時に同行してきた35才くらいの甥は、「調査の結果、部屋へ何者か侵入の事実がなかった場合は、伯母の精神的な原因を考えざるをえない」。今後の方針を決めるために調査の依頼を決めたということでした。
見えない敵から攻撃され続けている、という、妄想(強迫観念)にとらわれる人は男女ともに独居老人に多く見られます。 高齢者の自殺や夫殺し、妻殺しが頻繁に報道される大変な時代になってしまいました。高齢者は、過去の栄光・肩書などは捨て去り、積極的に血縁者、周辺の人に自ら入って行かなければ救われないことを小林さんの生きざまを見て感じました。
一昔前は、小林さんのような被害妄想の人を一般的に「ノイローゼ」=「ある心配事が原因で心身が壊れかけている人」と一緒くたに表現していましたが、現在は症病名を分類しているようです。
ノイローゼ=【神経症】心理的な要因と関連して起こる心身の機能障害。器質的病変はなく人格の崩れもない。病感が強く、不安神経症・心気症・強迫神経症・離人症・抑鬱神経症・神経衰弱・解離性障害など種々の病型がある。【広辞苑】
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