心が折れた人たち
依頼者 高田信夫(36) 無職 仮名
調査目的
インターネット掲示板に私の中傷が掲載されていないか
警察の犯罪者リストに私が掲載されていないか調べること。
電波を使って私をいじめる壊し屋を突き止めてほしい。
相談概要
1 M 社に勤務しているとき、更衣室のロッカーが荒らされてお金が盗まれる事件がたびたび発生した。この事件当時、私は再就職先が決まり転職したために窃盗事件の犯人扱いされて事情を聞かれた。
2 転職して間もなく、そこの事務員が電話で社会保険事務所の人と私の事を話題にしていた。
3 社内で、みんなが私を見てヒソヒソ話をしている。その会社に行く気力がなくなって退職した。遠方の市外の会社に転職しても窃盗事件の噂をされる。転職を何度も繰り返しているが、中傷の噂が怖くて再就職できなくなった。現在は無職です。就職のたびに「壊し屋」が電波を使って暗躍している。
4 私の身辺につぎのような不思議なことが起こる。
① 庭で洗車していると、他人が自宅を覗き見している。
② 買い物のとき、車や人に尾行されている感じがする。
③ スキー場に行ったとき、チケット売り場の人が私の顔を見て台帳の写真と照合していた。
④ 周辺の出来事で、自分が知らないことを他人が知っている。自分は村八分にされているようだ。
⑤ ショッピングセンターで買い物していると、周囲の人が隣に来て私を見ている。
⑥ コンビニで買い物をすると他人が自分についてくる。
⑦ タクシー運転手の目線が私を見ている。川辺の釣り人が私を見て写真を撮った。
⑧ 学生らが私の車のナンバーを見て何事か話し合っていた。
⑨ 他人が、私の外出先を知っていることがある。電波で調べているらしい。
⑩ 友人も私を避けているみたいなので、わたしから声をかけられない。
5 電波を使う壊し屋か、又は警察が私を苦しめている。数年前、「関西ナンバーの当たり屋」に多くの関東のドライバーが被害を受けたという風説が流布したことがあり、警戒すべき関西ナンバーのリストが出回ったことがあるが、それと同じく何者かが、私の車の番号を「当たり屋なので注意」と書いた中傷ビラを撒いているのではないか。(筆者注・関西ナンバーの当たり屋事件とは、走行中、二台の関西ナンバーに前後に挟まれて、前車が急ブレーキをかけて後続の車を追突させて損害金をとられたという被害者が続出したという風説。しかし、実態は不明。)
探偵の眼
依頼者は、「高校(16)の夏休み町工場でアルバイトをしたとき、職場の人妻(25)に誘われて性関係を持ったことがあり、この女性の身内に警察官がいた。調べられているようで、ずーっと罪悪感に苦しめられた」と告白した。
「警察から嫌がらせを受けている」とか「犯罪者リストに記載されてないか」など「警察」がキーワードになってます。この真面目少年にとって人妻との関係は一大事で、その重責がトラウマになったようです。
身近に起こる些細な出来事を「すべて自分は何者かが操作する電波に監視されている」と思い込み、「怖くて外出できず家に閉じこもっている。自分は村八分にされている」と自虐して引きこもりになりました。
身の丈に合わない行為は自分が苦しむ教訓です。
高田信夫の主張する電波被害や村八分、中傷被害による引きこもりは未だ軽度の「妄想性強迫障害」と診断されるそうです。あれから彼は強迫障害の呪縛から解放されたのか、精神が壊れた人間になってしまったのか。
被害妄想の人物による凶悪事件が続発していますが、それらの報道を聞くたびに探偵事務所を訪れてきた人たちを思い起こします。最近起こった下記の妄想性強迫障害の主人公があなたの隣に潜んでいるのです。彼らに偏見の目を向けては危険です。
山口連続放火殺人事件 2013.7.21 保見光成(63)の犯行。山口県周南市金峰地区
被害者5人全員に恨みがあった。事件2年前、周南警察署を訪問「悪口を言われており、自分はつらい立場にある。村の中で孤立している」と相談。村八分による精神崩壊。
郷集落の住民談
「メディアは、よってたかって彼をいじめたと報道しているが、誰もいじめてはいませんよ。溶け込まなかった彼の弱さもありますし、被害妄想だと思う」。
犯人の弁護士会見・談
「少なくとも保見さん自身の認識では、自分について悪いうわさが流されている、あるいは周りの人から監視されているという意識を強く持っていました」。
洲本市淡路島の集落5人殺害事件 2015.3.10
平野達彦(40)無職 10年引きこもり 集落 村八分 電波系 親も恐怖で警察に相談、などがこの事件の目立つワードです。
ネットに「加害者のツイッターの内容がヤバすぎる 完全な電波系の人ですね」とのネットユーザーの書き込みがあります、では平野達彦のツイッターの一部を掲載します。
※ 電磁波犯罪 ストーキング妄想 反中国 自衛隊 右翼連中テクノロジー犯罪 集団ストーカー犯罪 兵庫県警スキャンダル封じ
※ 米軍ユダヤ日本政府は各地で集団ストーカー犯罪とテクノジーを行っています
※ お前らは被害者に成りすましながら電磁波兵器で天皇崇拝者をつくり右翼活動をしている。手口を世界各国に告発してやるからな。
※ 人の資産も心も次々と欲しがり、集団ストーカー犯罪とテクノロジー犯罪を行っている、人面獣心者ども。
全く意味不明ですね。精神が壊れた人たちの中で特に「電波系」といわれる妄想が顕著な人です。
映画八つ墓村のモデル・津山事件(昭和13)
日本犯罪史上前代未聞の大量殺人事件(犠牲者2時間足らずで30名。オウム真理教事件は全体で27名)
犯人都井睦雄の遺書には「村の冷淡、圧迫、いじめ、弱いのにはこりたこんどは強い人に生まれてこよう」などとしたためられ、動機は「自分の悪口を言った女への復讐のため殺す」とあります。
犯人は、集落の婦女子とだれ彼かまわず淫行を求めたりして本人の責に帰すことが多いが、結核による社会参加ができなかった劣等感も強かったらしいです。そして、これほどの事を起こした動機は集落から白眼視(中傷)された「恨み・怨恨」でした。
アルコール依存症の父に育てられた夫 2
※これは依頼者から提供された資料の掲載の同意を得たものです。
●日常生活
朝起きてさわやかに「おはよう」が言えない生活。
たとえば、冬は電気カーペットを敷きコタツに入って寝ている。その寝姿はおぞましく見苦しい。コタツから足半分をだし、シャツは寝乱れでグシャグシャ、そのまわりには夕食の食べ残し、茶碗やたばこの吸い殻、みそ汁の具などが散乱している。テレビや電気は点けっぱなしで朝を迎える。歯磨き洗面は決して洗面所に行かず、必ず台所の流しでやる。私が流しを使っていても横で空くのをじっと待っている。
夜中に帰宅して、ガスを付けたまま寝てしまい、これまでに何十個鍋類をダメにしたかわからない。焦げ臭いにおいで一階に寝ている義父が気が付いてガスを止めるので大事に至らない。夜中2時頃ロレツがまわらない電話してきたり、車中で寝てしまうらしく帰宅しないことも度々。私宛の電話を受けてもその伝言を忘れて私には伝わらない。ボーっとしていて会話が成り立たない。子どもとの約束も忘れてしまう。いつもボーっとしてタバコをふかしている。使い終わった綿棒や楊枝はどこにでも放置しけっして物をゴミ箱に入れるということができない。
車の中はゴミ箱よりひどい状態で、ビールの空き缶はもとより、たばこ、つまみの空き袋、梅干しの種、湯呑み、楊枝などが助手席の足元に山のようにゴミがたまっている。腐敗した悪臭が車内に充満していても気に留めない。
靴下はどこへでも脱ぎ散らかす。箪笥を開けたら開けっ放し引出などを閉めることができない。出勤も休日も同じ服装でいて生活の区切りができない。夜中でも足音高く歩き回り、ドアの開閉も加減ができない。私の足を踏んづけても平気だ。家族が寝ているから、夜中だからなど心使いの神経がない。
土日はただひたすら居間のカーペットで寝ている。テレビだけが友だちのようで、無表情で飽くことなく見ている。人間的なぬくもりが感じられず抜け殻のようだ。
優しい言葉などかけてもらったことがない
何度も何度も夫婦のあり方、子どもの教育、夫としての責任や家族のあり方など話し合ってきたが、主人はいつもそのような話になると、一言も発せずただただ私が話し終わるまで沈黙している。「どうなの?」と聞いても明確な返事がないばかりか、その大事な話の最中に「明日の天気はどうなんだ、曇りなのか雨なのか」などと平気で言う。こんな生活が続いて私は気がおかしくなってしまうと思い、ついに家庭内離婚の状態に入った。他人だと思えば、ただの同居人だと思えば腹も立たないと思ったからだ。もちろん夜の夫婦生活もなく、最低限の会話しか交わさず、夫の目さえ見ない生活がもう5年も続いている。「生活をもう一度立て直そうとか、俺たちはどうなっているんだ」など夫からの話はない。
毎日が平和に過ぎ去っていくがごとく夫は生活している。家庭内離婚に踏み切るときにこのような情景は予測できた。多分私がこのまま生活を続けていけば一生このままで終わると思う。ただ時間が流れ、子供も成長し、私も老いていく。毎日の生活がどうであれ時間が流れ月日が機械的にすぎていく。夫にとって生きるということはどうもそういうことらしい。
私は真っ平ご免である。私は自分の人生を生きていきたい。子どもたちにも、生きているということは素晴らしいと思える一生を歩んでほしいと願っているし、親としてそれを教えることが責務だ。そのためには何としても現状から脱出しなければならない。
探偵の眼
前回、アルコール依存症の父親に育てられた夫 1 で精神科医・高橋竜太郎著の一部を転載した、 ・・・そうした子どもは感情の安定性や理性的な判断を親からもらえずに成長するため、ある子どもは抜け殻のようになり・・・
夫、磯野和人は精神科医・高橋竜太郎の指摘するアダルト・チルドレンのようですね。
妻、亜紀さんは子どもが小学5~6年生になるまでじっと耐えていたのです。磯野家の荒涼とした家族関係の中で心も折れずに母親の役目を果たしてきました。筆者のところへ来たときも笑顔が絶えず考えが前向きなのです。とっても聡明な女性だと思いました。
依頼者 妻 磯野亜紀(37)図書館勤務
対象者 夫 磯野和人(40)情報処理会社勤務 IT技術者 共に仮名
※これは依頼者から提供された資料の掲載の同意を受けたものです。
調査目的・相談概要
夫の浮気調査だったが、聞き取りの結果、夫が女遊びなどをしている様子はない。妻は夫との離婚の意志が固いため離婚調停から離婚裁判を想定して、弁護士さんに状況を説明するため「生活記」としてまとめた。
「無気力症候群の人たちは、アルコール依存症の父親に育てられたという共通項があります。父親から絶えず言葉や暴力で攻撃され続けてきたという過去をその人たちは持っている。子どもたちにとって親というのは唯一実感できる大人です。どんなに『親のようになりたくない』と思っても、子どもは無意識のうちに親の言動をまねているものです。子どもの人格は親が決めるといっても過言ではないでしょう。ところがアル中の父親からは、自分をどのように育てたいかということを含めて何もメッセージが伝わってきません。理不尽なことばかり要求されたり、暴力を振るわれたり。しかもその状況から逃れることも許されない。そうした子どもは感情の安定性や理性的な判断を親からもらえずに成長するため、ある子どもは抜け殻のようになり、ある子どもは暴力などの逸脱行為にふけるようになります。どちらにせよ子どもが子どもらしく育つことを否定された結果です。こうした機能不全家族で成人した人をアダルト・チルドレンといいます。」
扶桑社文庫・あなたの心が壊れるとき/精神科医・高橋竜太郎著 から抜粋
生活記
●新婚当時より漫然とした不安を感じる
新婚旅行は磯野家の親族と7人でイギリスに行った。夫の親戚のつながりは強い。12日間ずつと親戚と一緒で、最後の夜だけは私の要望で別行動をとった。旅行中の夫婦生活はなし。英語を解さない私に通訳するとかサポートすることもしない。旅行から帰ってからの性生活はつねに3分で終わる。その間会話も何もなく、ほとんど無言の状態で行為が終わり、もっとどうにかしてほしい旨を伝えるがまったく取り合ってもらえない。
●義父の酒癖・夫の酒癖
勤務を終えて帰宅すると、同居の義父は一升瓶を庭に転がし、茶の間のポットは横倒しになり皿やコップが居間に散乱しているということが度々で、庭先や家の中でわけの分からない罵声を発しわめき散らしている。義父は雨が降ると仕事が休みで、必ず昼間から仲間と酒飲みになる。夕方には決まって喧嘩が始まるので、私は雨の日の帰宅がゆううつで帰れず、何度も途中のレストランの駐車場で時間をおくったことがある。
結婚当初からこんな有様なので、将来に希望が持てず数度実家に帰ったが、その都度、なんだかんだといっては連れ戻された。
このような生活が続いて何年か経ったある日、義父はいつものように泥酔状態で、私はビクビクしながら夕食の準備や子供の世話をしていると、何やら言いながら近寄ってきたかと思うと突然抱きつかれた。呆然となり子供二人を抱きかかえて逃げ回った。執拗に追いかけられ、二階に上がってきたが必死で義父の手を振り払って大声を上げて難を逃れた。
夫に泣きながら別居してと訴えても、「長男(4歳)が守ってくれる」と一言だけで終わり。早目に帰宅して様子を見るとか、雨の日だけでも定時で帰ってくるとか、誰かに相談するとか、何かはできたはずなのに何一つ行動してくれなかった。
夫自身の酒癖も悪く、まず飲酒運転は平気。缶ビール片手に運転して帰宅する。結婚前に自爆事故で大怪我をして入院したことがあり、「屋根から落ちて骨折した」と会社に申告して解雇を免れた。結婚してからは三度、いずれも自爆で車を大破している。
無気力人間なのに飲むと豹変し、年上だろうと大先輩だろうとかまわず、「あんたは仕事ができない」だの、「あんたの息子を俺が面倒見ている」などと大きなことを言ったり、絡んだりしてひんしゅくを買う。飲みすぎて家の内外ところかまわず吐きまくるのも常である。車の中はもとより、ベランダ、茶の間の障子、トイレ、通路などどこでも平気。他人の家の庭先に勝手に車を駐車して警察から呼び出されたこともあり、その家にお詫びに行くように言っても馬の耳に念仏である。この頃は、酒量が一段と増えロレツが回らなくなり、何を言っているのかわからないときが時々ある。飲みすぎて翌日遅刻や年休を取ることも多い。
●育児
自分から進んで子供に接触しようという意志はまったくない。出産後、私がどんなに疲れていても手を貸してくれようとせず、子どもの入浴、風呂洗い、洗濯、食事などの家事は疲労のためふらふらしながら私がやった。子どもが脇で泣いていようと、危ないものに近づこうと無関心。休日はフラリと出かけてしまい、子どもの顔さえ見ようとしない。思い余って私の父親にそれとなく言ってもらうと「僕は気を使うと疲れるのでそういうことはしたくない」との答えだ。
ミルクや必要品の買い物を頼むと、出かけては行くもののいつまでたっても帰ってこず、困り果てたことが何度もあった(注・携帯電話が無い時代です)。成長した二人の子供たちが話しかけても、一度や二度では気が付かない。いつもぼーっとしてテレビを見ている。
野球少年団に入っている小学生の子供の練習に付き添いを頼むと、「この寒いのに僕はグランドになんか立っていられない」とあっさり断られた。父親として、子を養育するという意識など一つも感じられない。
夫の勤務する街に私の実家があり、残業や飲み会で帰りが遅くなると私の実家に泊まることがある。父が一人住まいしている家に、主人は夜遅くヅカヅカと入り、ところかまわず電気をつけ、ガスストーブも点けてそのまま寝入ってしまうらしく、父が夜中に起きてその後始末に追われたようである。火災になりかねないのでその旨注意するが一向に直らないため、出入りを禁止された。夫は「常識」ということが欠落しているのだ。2に続く
依頼者 藤田紀夫(65)無職 仮名
調査目的
電波攻撃をしている者の正体を暴いてほしい
相談概要
私が何者かに電波攻撃をされるようになって5年になる。その経過を話します。
ハウスメーカーの住宅設計部門に勤務していた55歳の時、帰宅途中ホームセンターに立ち寄り、その店で事務用品を万引きした。もちろん万引きなど初めてのことだが、50歳を超えたころから、なんとなく憂鬱になったり、イライラしたり落ち着きがなくなった。仕事に集中できずやる気がでなくなり、何に対しても興味が持たなくなった。夜は眠れず、疲れが取れない。体もだるく、肩こりめまい等で気分も体調も全く不調が60歳で定年退職するまで続いた。
そのような気分が憂鬱な時期に万引きしたわけだが、自責の念に駆られて仕事も手につかず食事もできなくなって三日目、菓子折りを持ってその店を訪れ、店長に面会、事情を説明し事務用品を返して謝罪した。店長から「今後このようなことはしないように」と注意を受けただけで許してくれた。
これで呵責から解放されたと思った。
しかし、それから社内の空気が一変したような気がした。事務員はあちこちで私を見ながらヒソヒソ話をする。上司の態度が威圧的になった。同僚も部下もよそよそしい態度になった。あの店長が万引きの事を会社に通知したのだと思った。
このように社内から白眼視されて体調は悪化するばかり。定年退職を迎える一年間は事務所内から、ホームセンターの名前や事務用品名、万引き・・などの笑い声や私の名前を誰かが話している声が聞こえるようになった。
退職したら、家庭内別居を続けていた妻は、遠方の実家近くに部屋を借りて別居を始めた。私がずっと相手ができなかったので、男でも探すため逃げたのだと思う。子どもたちはずっと前に独立して暮らしている。今は一人暮らしで病院通いが日課だ。数年前から身辺に異常が起き始めた。自宅の脇のアパートに新聞屋の配達員が数名住んでいる。10名くらいの男らは早朝、昼間バイクでアパートを出たり入ったりして、私を見張っている。電波も私を宇宙から監視している。私が出かける先を察知してその家に私の悪口や10年前の万引き事件を告げ口するようになった。今まで親しくしていた知人や親せき、バイク修理店などどこへ行っても手のひらを返したようでお茶も出してくれず、「早く要件を言え」と追い返すような態度だ。
電波攻撃を受けつづけて糖尿病が悪化した。膀胱に電波が通るので1分間に2回チクリ、チクリと痛む。警察に度々行って被害を訴えたが笑って聞くだけで相手にしてくれない。電波攻撃の犯人はあの新聞配達員を束ねている新聞店長だと思う。早く証拠をつかんでほしい。
探偵の眼
藤田さんのような人が裁判所、法務局、市役所、警察署などをたらい回しされてたどり着くところが探偵事務所らしいです。藤田さんは事務所に来るたび袋一杯の薬を持ち歩いていました。会社員当時からつづいている糖尿とうつがさらに悪化したようです。
社内から白眼視されつづけ、知人、親戚、馴染のバイク屋からは、同じ悩み事ばかり(自宅の監視と電波攻撃)繰り返し言うため敬遠され、家庭では孤立してストレスがたまる一方でした。「会社内の人が私の悪口を言っている。笑っているのが聞こえる」は幻聴です。「新聞配達員が入れ替わり、俺を見張っている」は、配達にでかけ、戻って休憩して配達先拡張と集金など出入りが多いだけなのです。新聞配達員から見張られていること、電波攻撃の被害は妄想です。
藤田さんのように「電波攻撃をうけている」という相談は探偵事務所開業以来、年に数件あるのですが、「万引きによる呵責」が原因で心が折れた人は初めてでした。 藤田さんを攻撃している新聞屋グループの証拠調べが終わってから1カ月ほどたって、新聞の「お悔やみ欄」に藤田さんの死が掲載されていました。病死か自殺か不明ですが孤独のまま亡くなって行った藤田さんが可哀そうに思いました。
万引きによる自責の念は藤田さんばかりでなく、大勢の人が苦しんでいることが分かりました。ネットの書き込みに、「数年前の万引きを謝罪したい。6~7年前高校生の時実行犯の行動を知りながら止めず、盗品と知りながら商品を譲り受けたことがある。近頃報道されている万引きの動画を見ていたらふと思い出し、罪悪感に苛まれています・・。自己嫌悪で何もする気が起きません」とあります。
藤田さん死亡後知ったことですが、万引きにおける「しょく罪寄付」という制度があり、弁護士会等への寄付で慈善事業のため用いられる。しょく罪寄付は万引きで得た不法な利益を「得たままにせず、きちんと公共のために返還した」という証拠になり有利な情状の一つになります。しょく罪寄付を行うことによって減刑される場合があります。
このしょく罪寄付は、店長と面会して和解した藤田さんの事例には該当しないことですが、せめて密かに善行や苦行を重ねて罪滅ぼし、償いをして自らを許す知恵があったらば、と悔やまれます。