。依頼者 永井一郎(30)会社員
対象者 牧田好恵(30)無職 共に仮名
調査目的
牧田好恵を詐欺罪で告訴するため所在と事実の確認
相談概要
下記に記述
調査結果
牧田の実家とアパートを訪問したが所在不明。アパートは数カ月使用した形跡はなく、大家さんも家賃未収で困っていた。また、牧田の女友として登場する達藤田真由美に関してすべて架空の作話だった。結婚詐欺とは、男、女どちらが演じても、自分自身の履歴等を虚飾してパートナーを騙すのが一般的だが、高校時代の同級で身元を知られている牧田は架空の「お金持ちのかわいい女」を登場させたところに悪知恵が際立つ。
牧田の地元の風聞
高校生のとき、友達の妊娠話をデッチ上げて「中絶費カンパ」を行って集めた金を騙し取ったという。社会人になってから、少しでも顔見知りになった人の家にケーキなどをもって訪問し、帰宅際、(仮病で)腹部の激痛などを起こして転倒し「妊娠しているので、このまま帰るのが怖い。近くの産婦人科に行きたいので、健康保険証を貸して」といって身体の異変を訴える。借りた保険証をもってサラ金に直行して金を借りる。この手口で被害にあった人が相当数存在する。虚言症を持っている(牧田を使用したことのある飲食店経営者談)。その他様々な寸借詐欺を働いて地元にいられず各地を転々と詐欺行脚しているようだ。
探偵の眼
牧田好恵は、小柄で激痩せ型、色黒、小さな顔は貧相(飲食店経営者談)。自分自身の結婚話で、男を騙すことは無理、とわきまえて架空の「可愛い系美人と財産相続の甘い話」を登場させるところに女詐欺師の見事な手口をみた。
牧田を告訴するための経緯(永井一郎の被害告白を筆記した)
女と再会
私と牧田は、同じ高校を卒業してから10年間全く交流は無かった。〇年1月、牧田から突然自宅に電話が有り、指定されたJRの駅で会った。
卒業後の消息とか、現在の生活ぶりなど話をしてその日は別れた。それからたびたび誘われて数回肉体関係をもった。
女の布石
〇年2月、牧田は、「あなたの写真を私の友だち、藤田由美に見せた。真由美はあなたをすごく気に入って、『結婚を前提でお付き合いしたい。結婚してもいい』と言っている。真由美は可愛い系。今は浦和市に住んでいるが実家は前橋市」といった。私は可愛い美人と付き合えることで舞い上がった。
牧田は、「実は、真由美ちゃんの母親が白血病で川口市の国立病院に入院している。その費用として20万円貸してあげてほしい。どうせあなたと真由美は結婚するのだからいいでしょう。ところで真由美は、あなたからのお金だというと受け取らないと思うから、私が真由美に貸すことにして渡す」と言い、私はお金を用意して入院費用を牧田に渡した。
藤田真由美の悲話
しばらくして牧田が、「真由美の母親が白血病で死んだ。そのショックで、前から心臓が悪い父親が川口の国立病院に入院した。真由美は毎日泣いて暮らしている。あなたにも会いたいと泣いている。どうか彼女のためにお金と力を貸してあげて、お金は少しでもいいから」。
結局私は、〇年5月から翌年3月までのあいだに、真由美の父親の治療費として数回に分けて、合計600万円をJR川口駅などで牧田に渡した。
周到な計画
〇年9月15日。牧田から「明日、真由美を迎えに行き、彼方に合わせるから家にいるように。またあとで電話する」と電話が入った。
18日に牧田から連絡が入り、泣きながら、「今、真由美を乗せ貴方のところへ向かっている途中、高速道路でスピードを出しすぎてガードレールに衝突してしまい助手席の真由美が大怪我をした。後で詳しい連絡をするから待っていて」と、あわただしい様子で電話が切れた。
それから1週間すぎて牧田から、「真由美は現在浦和市の病院に入院して個室に隔離されている。ワクチンを注射しないと命が危ない。貴方が、『早く真由美に会いたい』というから深夜急いで走ってこんなことになった」と、事故が私の責任で起こったみたいな口調でいわれた。
その後再三電話が入り、「真由美が死んだらどうするの。貴方が殺したようなものだからね。だから助けるためにワクチン代を出してよ。1本30万から50万円くらいするけど、早く出してよ。個室に入院しているから費用も1日3万円かかる。貴方の責任だから払うように」と執拗に要求された。
私が、病院に見舞いに行きたいというと、「真由美は『見苦しい姿を一郎さんに見られたくない』と言っている」と断られた。それで、9月20日から11月までの間に数回に分けて合計350万円を牧田に渡した。※牧田は病院の待合室から、事務員が患者さん呼び出しのアナウンスをしているときに電話をかけてきて演出をしたという。
つくり話はまだ続く。「真由美のお父さんは妻がなくなったショックで心不全が悪化した。真由美は母親と病弱な父親の看病を献身的に行っていた。真由美の兄は東京に住んでいるが、仕事が多忙とかで実家に寄り付かない。心身ともに弱気になった父親は、真由美に全財産を相続させると言い出した。弁護士に依頼して遺言書を作成してもらうことになった。弁護士さんへの報酬として300万円支払うことになった。貴方は真由美と結婚したら藤田家の財産は貴方が使うことができる」と言った牧田の話を信じて300万円を渡した。その後彼女からの連絡が途絶えた。音信不通が数カ月たって永井一郎は女に騙されていたことを知った。母親と探偵の私に調査を依頼に来た。結果は記述の通り。詐欺罪で刑事告訴の準備をしていると、母子は「女からの後難が怖いから告訴はしない」との申し入れがあった。永井の知人らに女の消息を聞くと「昔からその筋の人たち」との交流がある風評を聞いたという。
永井一郎は女に合計1300万円を詐取された。その資金は、父親が地元の大会社を定年退職した退職金と父の死亡保険金を充てたという。かわいい女との結婚を夢見て大金を騙された。この女の虚言を見抜けなかったのか質したところ、「薄々疑問を持ったが真由美さんの存在が完全に断ち切られるのが怖かった」と声を落とした。山村に住む母子の失意の姿が哀れでした。
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