依頼者 横田和夫・妻瑞穂 夫妻
対象者 秋田次郎
調査目的 調査対象者に関する下記提示する項目について
依頼の概要 横田夫婦談 娘は現在東北F県にある私立大学四年生です。賃貸アパートに暮らしていて、卒業したらそのまま東北のS都市で就職する予定だという。何故こちらに帰ってこないのか何度も厳しく追求した結果、S市内に結婚を前提に一年前から交際している社会人の男性(24歳)がいるとのこと。娘が説明しているその男性のことは下記の通り。
実家はパチンコA店、スーパーB店などの土地を賃貸している。賃貸アパートコーポA棟 B棟C棟を持っている資産家です。実家には行ったことはないが車に乗っているとき大きな立派な二階建ての家を指して「あれが僕の実家だ」と教えてくれた。長男は東南アジアで貿易の仕事をしていて、海外に永住することになっている。二人の姉も資産家に嫁いでいる。秋田次郎本人はF県内では大手のG建設株式会社の社員で営業をしているとのこと。娘にその男性に合わせるように要求して半年後に面談することができた。
某市内の喫茶店で私たち夫婦は秋田次郎と面談した。第一印象としてこれが資産家の息子か?と疑うほどの人物だった。外見的に貧相で覇気がなくおどおどした小声でボソボソとこちらの質問に回答した。その対応はG建設の営業職の社員とは思えなかった。秋田次郎の説明要旨は次の通り。
父親は病没しており、兄は事業に失敗して破産申し立てが受理されたが地元にはいられなくなったので家を出た。現在どこに暮らしているのかわからない。なお、父親名義の財産は将来私一人が相続することになっている。等の説明を受けた。勤務会社の名刺は娘さんに渡しますと。パチンコA店、スーパーB店などに賃貸している土地の住所(これは調べた後連絡します)とのことでした。
1.秋田次郎に関する ①経歴 ②人柄,風評 ③勤務状況 ⑤勤務状況
⑥思想傾向、宗教 ⑦交遊関係 ⑧素行、生活態度
2.秋田次郎の家庭環境。実家の資産、家族・両親の評判、兄弟姉妹、父系 親族 母系親族、秋田次郎の近隣における取材、友人からの取材、勤務先からの取材。
調査結果
横田夫妻から依頼された、秋田次郎に関する上記1.①~⑧及び2.の取材項目について結論から記すると、自宅の所在、商店等に貸している土地、勤務先、親、兄弟姉妹についてすべて虚偽であり指定された全項目の調査は不可能でした秋田次郎の家庭事情を知る人に直接取材することができたのでその結果を報告します。
秋田次郎当人が申告した事項について
1.パチンコ店A、スーパーBに賃貸している土地登記簿謄本を調べた結果双方とも当該の自社名義でした。前の所有権者にも「秋田」の氏名の記載はない。
2.長男Yは東南アジアで貿易の業務事業に失敗して東北貿易商事KKという会社の破産宣告申し立て、受理された後地元を出奔し現在行方不明について。破産宣告を受けたものが掲載される「官報」を調査した結果は破産宣告申し立ての事実はなし。F市の商業登記簿を管轄する法務局にも「東北商事KK」の会社は登記されていないなお、長男Yについては後述する。
3.賃貸アパート、コーポA・B・C棟の管理人・不動産会社に問い合わせた結果、秋田家とは全く関係ない所有者が存在している。秋田次郎の自宅という大きな立派な持ち家についても全く秋田家に関係ない人が住んでいた。
秋田次郎本人及び、家族について
ドライブ中に二階建ての大きな立派な家を指さして「あれが僕の実家だ」と依頼者の娘さんに説明した家を探し当てた。付近の人に尋ねたところ「あの家は秋田家ではないよ、秋田?・・」と不審がられ付近の数件に聞いても何かを隠して話したがらない様子だ。困り果てて農作業をしていた老人に尋ねたところ次のようなことを教えいくれた。
「あそこに見える小屋みたいな建物が秋田家の家だ・6帖二室しかない。秋田次郎という男はあの大学のあるS市では有名なチンピラグループの悪党の一人だよ。父親は昔家を出て今は生死不明だ。長男は現役のやくざ者で隣の市にある組に所属している。まあ、あの家には関わらない方がいいよ・・」と警告された。筆者は念のためにG建設本社に電話して、「営業の秋田次郎さんにお仕事を依頼したい」旨を告げたところ、本社および、支店にもその氏名の社員は在籍していないとの回答であった。
小屋みたいな秋田次郎の実家付近の数人に聞き込みをした結果、確かに秋田次郎の実家だが、だれもが実態を話したがらない、聞き込んでいる私を迷惑そうに避けていることが分かる。父親も、長男も犯罪歴がありあの家のことを話したことが漏れることを恐れている様子だ。以上、現地訪問して調べた事実を報告して、このような状況なので上記1.と2.の結婚調査に関する各項目は調査の方法もないことを依頼者に告げた。娘さんは地元のチンピラグループの一人のカモになっている。うその塊のような悪党に騙されている。即座に手を切って大学を卒業したら実家に帰るように勧め、両親も同意した。落胆した両親の姿は正視できないくらいだった。
それから1か月後、「娘から連絡があり、お金を貸してほしい。妊娠後期で中絶ができない」と絶望的な声で依頼者から報告があり、それを最後に連絡は絶えた。
探偵の感想 「結婚詐欺に遭った」、又は「付き合っている男が怪しいから素性を調べてほしい」と女性から男の身元調査依頼を受けるのは多々あるが、今回受けたて現地に入って分かったことは、娘さんは秋田次郎の正体を知っていて秋田と娘さんはグルになって「横田夫妻を騙していた」と実感しています。親を騙す娘さんは少なからずいますが、それなりの理由があっての一時的なことが多いです。横田夫妻の娘さんの親を裏切った嘘は親子の断絶が生じ心の傷は消せないことだと思いました。
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