弁護士ドットコム の記事転載
● 「肉体関係さえなければいい、と思っていたら大間違い」
Q 不倫する人にこそ、法律的な知識が必要なのかもしれないですね。
A 「不貞」や「不倫」の定義を裁判所がどう考えているのか、というのも本当は知っておいてほしいところです。たとえば、離婚理由として認められるものは民法770条1項に定められていますが、、その中の「不貞な行為」とは、現在の裁判実務では、基本、性行為すなわちセックスのみをさします。
ところが不倫慰謝料の対象となり得る行為は、もう少し幅広い解釈となります。たとえば、キスにとどまるとか、一緒にお風呂に入っているとか、そういう行為も「不法行為」(民法709条)の対象になり得ます。今の判例の一般的な考え方では、「婚姻共同生活を侵害・破壊に導く可能性のある行為」をさしていますから、不倫慰謝料のケースでは性交渉さえなければいい、と思っていたら大間違いです。
Q マスコミの報道では「一線を超えたか、超えていないか」がキーワードになっていましたね。でもそんなに甘いものではないと?
A 人によって解釈が異なりますからね。食事だけでも駄目だという人もいますし。慰謝料請求の対象となる「不倫」とは、一線を超えたか超えていないか、という基準だけではありませんから、注意が必要です。そしてもう一つ、不倫に関しては思いもかけない爆弾が存在します。「交際が終わったから安心」と思っていたら、時限爆弾のように後から爆発することがあるのです。
Q つまり、昔の不倫がうっかり発覚しちゃうということですか?
A たとえ、きれいに別れることができたとしても。交際が終わってから数年後に、元交際相手が、スマホに交際中のLINEや性交渉中の写真などを削除しないで保存していて、それが、交際が終わってから数年後に、その配偶者に見つかってしまうケースがたまにあります。
Q そうした場合、時効にはならないのでしょうか
A 不倫の慰謝料請求の時効は3年ですが、どこから不倫の交際期間とカウントするかが鍵となります。不倫の事実を知らなければ、加害者が誰かも知らないので、論理的には10年前の不倫であっても 、不倫された配偶者が、不倫の事実やその相手が誰かを知ったのが最近であれば、事項は完成していないという話になります。残念ながら、以前の不倫が原因で離婚してしまうご夫婦もいます。不倫相手とモメずにうまく別れたつもりでも、時限爆弾のように後から爆発するケースもあると知っておいてください。
● 「自分は絶対にバレない」とは思わないで
Q 本当にありとあらゆるリスクがあるし、正しい不倫の終わらせ方というものはないんですね。
A 今回は不倫してしまったサイドの話をしていますが、決して「不倫をうまくやれ」というわけではありません。恋愛については法律がさばけない部分も大いにありますし、リスクを背負ってでも落ちてしまう恋は誰にも止めようがなかったりします。
私は不倫してしまった方も、不倫されてしまった方も、相談と依頼をいただきますので、両サイドの立場から見させていただいておりますが、やはり、不倫が起きてそれが発覚することにより「傷つく人がいる」というのは考えるところが大きいですよね。不倫をされた側の配偶者や子供に対する精神的苦痛や、その後の生活の不安など、損害は絶大ですから。それを考えますと、当然ですが、安易な気持ちで不倫に手を出すには止めた方がいいでしょう。
それでもやはり不倫したいとのことでしたら、「自分は絶対にバレない」などと思わず、発覚して慰謝料請求される可能性があることも視野に入れ、費用面や精神面でも、自分自身でしっかり責任を果たせるかどうか自問自答したうえで決断した方がよろしいかと思われます。
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