尼崎・元妻刺殺 復縁迫った元夫愛を憎悪に変えた「2年の別居生活」
令和3年10月15日尼崎市のマンション駐輪場で待ち伏せされ潜んでいた元夫の森本恭平容疑者(33歳)に医療系事務員元妻
森本彩加さん(28歳)は背中など刃物で10回以上刺され出血死(即死状態)した。男が馬乗りになった状態で女性を包丁で刺しているところを宅配業者が警察に通報した。逃げ帰った自宅から複数の刃物と黒っぽい服、逃走用に使われたとみられるバイクが押収されいずれも血のようなものが付着していた。
離婚したのは1年以内で、「殺したのは間違いありません、復縁進まず憎しみ募らせた。殺すつもりで刺した」と供述している。しっこく復縁を迫る元夫から1年経ってようやく逃れられる・・そんな思いも空しく。
元夫の同級生は「彼のこと全く覚えていない」
男のアパートの住民は「印象は全くない。強いて言えば、おとなしくて真面目そうな感じだったかな」。元夫の実家を訪問したが十数年前に転居していたため周囲の誰も森本一家のことを覚えていなかった。地元の中学校の同級生を取材すると彼らは口をそろえた。「彼のことは全く覚えていない。いたかどうかも」よほど印象に残らない存在だったのだろう。影の薄い男が起こした元妻への凶行は余りにも理不尽な動機だった。むごい事件である。
「ストーカーの心理」荒木創造・心理カウンセラー著・講談社+アルファー新書 発行
この著書からストーカーに関するものを抜粋します。
ストーカーの定義とは
2000年五月一八日、ストーカー規制法が国会で成立した。その規正法ではストーカーの行為を「特定の人に対する恋愛・行為の感情やそれに派生する怨恨の感情を満たす目的で、つきまといや待ち伏せをしたり、面会や交際を要求したり、無言電話をしたり、著しく乱暴な言動を働いたり汚物を送付したり、名誉を害することを告げたり、性的いやがらせを反復して行うこと」と定義している。
五つのタイプがあるストーカー
全ストーカー行為のうち、95パーセント以上が恋愛感情のもつれから起きていると思われる。
大別すると、「恋人同士、または夫婦であったものが、一方が関係を切ろうとしたところ、もう一方がそれを許さずに、ストーカー行為に及んだもの=別れ話のもつれ型」と「単なる知り合い程度か、ほとんど知らない同士なのに、一方が勝手に熱を上げて近寄り、゜相手が断るとストーカー行為に及んだもの=片思い型」の二つに分けられる。
しかし、上智大学教授の福島章氏はストーカーの行為を次の五つのタイプに分けている。
①イノセント・タイプ=ストーカーと被害者はほとんど面識がないのに、ストーカーのほうで勝手に妄想して、ストーカー行為に及んでいるタイプで、この際、被害者にはほとんど責任がないので、イノセント(罪がない)と呼んでいる。
②挫折愛タイプ=単なる知り合い同士から恋人同士まで幅広い関係が壊れたとき生まれるストーカーのタイプ。
③破婚タイプ=法律的な結婚であろうと、事実婚であろうと、結婚を解消しょうとしたときに起きるストーカーのタイプ。
④スター・ストーカータイプ=有名人を狙ったストーカー。
⑤エグゼクティブ・ストーカー=学校の先生やスポーツクラブのコーチ、会社の上司などに憧れて、勝手に妄想してストーカー行為に及ぶタイプ。
前述「片思い型」のストーカーに狙われた被害者は身の危険、不安、焦りなどに襲われ怯え、苦しむけれども、自分の心の中には罪の意識や葛藤がないので、警察を含めて誰にでもすぐに相談できるのである。そのためか、現実には悲惨な事件にまでなることは例外的でしかない。
反対に「別れ話のもつれ型」は簡単ではない。
この前まで恋人同士で会ったり夫婦であったものは「片思い型」とは比べようもないほど、お互いに心理的にも経済的にも社会的にも深入りしていて、他人には知られたくないさまざまな秘密も共有している。大部分の場合、別れ話が始まる前に二人はいろいろといがみ合い、のの知り合あい、ときには殴り合ったり、泣いて謝ったり、朝まで話し合ったり、また罵り合ったりして、すでに心は疲れ切り、深く傷ついているのである。
そして、「もううまくいかない。別れようよ」ということになる。その一方が諦めきれずにストーカーになって、毎日何回も電話をかけてきたり、深夜自分の部屋に押しかけてきたりしたところで、他人に簡単に相談できるものではない。自分を失って悲しむ相手の気持ちもよく分かるし、まだ少しだけれども情けも残っているのである。
そのうちストーカーはナイフをちらつかせたり、金を要求したり、「おまえを失うくらいなら殺す」とか言い出す。
でも、この時点ではまだ警察にも言いたくないし、親や会社の上司などにも相談したくない。ストーカーとはいえ、相手が社会から糾弾されると思うとやはりかわいそうだし、恋愛をしていたということで自分にもいろいろ弱みがあるわけで、すべてを公にする覚悟はとてもできないし、へたに事を荒立てたら、相手は正気を失ってしまって復讐されるかもしれないとも思えるのである。
この「別れ話のもつれ型」の被害者が警察やカウンセラーに相談に来るときには、もうストーキングはもつれにもつれ、心理的にも物理的にも非常に危険な局面に来てしまっていることが多い。ストーカー行為として本当に危険なのは、一見たわいない痴話げんかの延長にしか見えない、この「別れ話のもつれ型」なのである。
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