依頼者 夫 竹中亮輔(34)IT技術者
対象者 妻 竹中優香(32)専業主婦
3歳の子供有り 仮名
※ これは事件簿を参考にしたフィクションです。
調査目的
妻の昼間の行動調査
相談概要
子どもが、「よそのおじちゃんと動物園に行った」、「ケーキ買ってもらった」などという。妻は「保育園の友だちのパパだょ」と言い訳する。
妻は何かにつけて反発するようになり、数カ月セックスレス。深夜のヒソヒソ長電話が多い(注・携帯電話が一般に普及していない当時)。協調性もなくなり、心が飛んでいる。家庭の中に今まで感じたことのない空気が流れている。妻は、何事にも冷めた感じで接し、投げやり。確証はないが妻に男がいるのではないか。
調査結果
対象者が外出時、依頼者立会いで電話に「盗聴器・録音機」をセットした。
録音テープの再生
男「・・旦那とやっているんだろう・・」
女「やらせないよ!私の体は竜太のものだから。・・風呂も一緒に入らないよ・・布団も別にして、ガードルつけて寝ているのだから・・大丈夫」「それから・・子どもがパパに『おじちゃんにケーキ買ってもらった』などと話しているのでもう連れていけない・・これからは親に預けていくから心配しないでね・・いっぱい抱いて・・」。
タバコを立て続けに吸い、ため息を繰り返しながら聞いている依頼者の表情が痛ましい。
会話の内容から二人が待ち合わせするパチンコ店が判明。後日、パチンコ店駐車場で男と女は合流し、男の車に乗って男のアパートに直行した。
経過
後日、依頼者に状況を報告すると、「男にケジメを付けるのでそのアパートに案内してほしい」。
アパートの部屋が点灯されて男の在室を確認すると、依頼者はワンカップ2本を立て続けに飲んだ後、探偵に「立ち会ってほしい」というのでドアをノックした。「どちらさん?」と男がドアを開けた途端、依頼者は「この野郎!」と怒鳴りながら男を突き飛ばし、靴のまま乱入して男を殴り始めた。男は、防御したが乱入者が女の夫であることを知ると無抵抗になった。夫は、男に激しく殴る蹴るの暴行を加え続けた。
男の顔が腫れあがり、両眼がふさがる状態になっても男はじっと耐えていた。探偵は、これ以上殴ったら危険と感じて依頼者の暴行を制止した。
探偵の眼
依頼者は、コンピュータプログラマー。端正な容姿。物静かな挙動からこの人の真面目さが伝わる。今日まで暴力などに縁がなかった生き方であろうと想像できるだけに、あの爆発的な暴行者に豹変したことが信じ難い。
平和な家庭を壊した男が許せなかったのだろう。「妻の浮気相手を暴力で封じる」という古典的な制裁を久しぶりに見た。
激しい暴行を受けた男も肝が据わっていた。自分の非を認め無抵抗・無防御で殴られつづけ、気分が悪くなったため探偵と依頼者の付き添いで夜間病院に急患で入り、医師に「数人の酔っ払い通行人に殴られた」といって暴行者をかばった。暴行がもとで1週間臥せっていても苦情も言わず、女と別れる誓約書を自ら書いて提出した。
依頼者は、「妻の背信で受けた心の溝は一生埋まらないと思う。離婚しか選択肢はない。ふるさとへ帰ります。」と繰り返し言っていたが、子どものために妻の不貞を許したことを後年人伝にきいた。
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