水戸興信所 探偵よろず日記

男と女の建築工法 神津カンナ 作家  ※注 これは17年前の週刊誌の記事です。

 どんなことでも受け止め方の違いというものはある。今話題の「松方夫妻」の芸能ニュースを見ている時にもふっとそんなことを感じた。
かって松方氏は、隠し子の存在が発覚して記者会見を開いたことがある。その時の模様が、今回の報道の中でも繰り返し画面に登場したが、松方氏はその中で、女房には怒られたけれど許してもらった、彼女は最高の女房です・・・というようなことを発言していた。実に嬉しそうな顔だった。
 それはそうだろう。隠し子発覚となれば、それは相当な夫婦の危機である。そこを何とか乗り越えたのだから、安堵するのも無理はない。ただ、私はその映像を見ながら、ああ、この山を乗り越えた時に双方が抱いた思いは、かなりかけ離れたものだったんだろうな・・・と思った。(中略)この騒動が一段落ついた時、たぶん松方氏のほうは「ここまで許してもらった」のだから、「これ以下ならまた許してもらえる」という方向に心理が展開し、一方、仁科さんのほうは、「今回は許した」けれども、「もう次は許さない」という方向に気持が展開した。つまり、山を乗り越えるまでは一緒だが、その後の互いの気持ちは、まったく異なる方向に向かい始めたのではないかと思うのだ。

 「あんなことさえしなければ、そこそこのことなら、謝れば勘弁してもらえる」と気楽になる男。「あれだけのことを許したけれど、もう次はどんな些細なことも許さない」と硬直する女。簡単に言えば、男は「次もOK」と思い、女は「次はNO」と思う。この認識のずれが、結局は大きな亀裂が入る。

 アメリカで大学生活を送っていた時、クラスメートの女の子が、こんなことを言ったことがある。「男の人の嫌いなところはね、一度キスしたら、次の時にキスまでは当然だと思い込んでいるところ。このまえ三まで進んだら、今度は当然四からだって感じ。毎回一からっていう発想がないのよね」。その時はふーん、と聞き流していたけれど、最近になって彼女の言葉を鮮烈に思い出した。

 確かにこういう違いは男と女の中にはあるようだ。そして男は、「女は理屈が通らない」とか「だから女はよくわからない」と評するのだけれど、女のほうは、男の素直すぎる理論構築に驚くばかり。この感覚の相違は、やはり埋めがたいものなのではないかと思う。
 たとえば定年を迎えた夫が突然、離婚を妻から言い渡される・・・というのも、男は、ここまで一緒に生きてきたんだから、この先も当然だろうと思い込んでいるから呆然とするのである。女の心理展開は、男のように「当然」とか「たぶん」で煉瓦を積むような進み方ではないのである。遊牧民のパオのように、さっきまで「家」をなしていたのに、あっという間に畳んで、跡形もなく運び去ることができてしまうのだ。「思い」の建築工法が違うのである。だから男と女は面白いし、壊れる時はびっくりするようなことになる。(以下略)。

※これは、週刊誌名は忘れましたが、「女がつくる男のページ」という記事ほぼ全文を転用しました。1998.12.10の印字があるのでこの日の発売です。男と女の「思いの違い」が分かり易く書かれたものなので、ページを切り取ってずっと保存していました。

妻に家出されたり、浮気されたりで探偵事務所に相談にきた夫たちにこの紙面をコピーして渡したものです。相談時の夫たちは頭に血が上っていて、この記事の内容を理解する人はあまりいませんが、後日、「俺が間違っていたみたい」とか「修復に努力する気持ちが起きた」とか言って、妻の家出や浮気を不問にする夫も少なからずいました。

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