依頼者 妻 佐伯真知子(50)中学教諭
対象者 夫 佐伯一郎 (53)中学教頭 共に仮名
※ これは事件簿を参考にしたフィクションです。
調査目的
夫の行動調査
相談概要
夫の携帯に1年前から頻繁に電話が入りだした。「携帯命」で肌身離さない。押入れに入ってヒソヒソ話していることもある。ある日、夫の携帯を盗み見たら、学校の事務職員早坂桜(40・未婚)と肉体関係をしているメールが入っていたので、翌朝、夫を問い詰めた。「なんで僕の携帯を見るのだ!これは空想の世界で彼女と楽しんでいるだけ。こんなメールを本気にする馬鹿いるか!」と怒鳴られた。「納得いかない」と食い下がると、すごい形相で殴られた。
夫は何時でも言い訳が出来なくなると、大声を上げて物を投げつけたりして暴力で対話を封じ込めてきた。
この一年来主人の生活ぶりが特に無軌道になった。帰宅は毎日深夜になる。車に毛布が積んである。週末家にいる時は朝から酒を飲んでいる。何か思い詰めているような様子もあるが下手に聞くとめちゃくちゃに暴言を浴びせられるので、怖くて声もかけられない。歳を重ねるごとに人間性が崩れ、一年前からとくに悪くなった。酒に酔うと言うことが支離滅裂になる。
このような人とこれから先も添い遂げる気持ちは失せている。大学の子どもたちは何とかなるので、夫の実態を調べた結果次第では夫と別れて一人で暮らしたい。
ちなみに、夫は中学校の教頭で校長職を希望しており、来春校長職選考試験を受けるためその準備・勉強をしなければならない立場なのです。
調査結果
調査対象者(夫)と(女)の深夜レストランでの食事。深夜、野球場・サッカー場駐車場でのデート場面の撮影すみ 。
教頭と事務職員のメールこれは、夫が妻に見つかったとき「仮想の世界で彼女と交換している」と言い訳したもで、依頼者がコピーを提供してくれたものです。
11/27 21:10 早坂桜(40歳) ~佐伯一郎(53歳)
そんな面倒なことしたくない。もう少しマジな方法考えられないの?バカみたい。みんなの前で堂々と渡してやる。別に私とのこと、バレたって構わないでしょ?あなたにとって「好きで好きでたまらない桜ちゃん」なんだから、みんなに知ってもらえたほうが嬉しいんじゃなあい。そんなに私のことが大切ならばコソコソ隠されつづけなければならないの?日陰の人生はもうまっぴら。
12/01 23:55 桜 ~一郎
最初の文字が「フェ」で始まる行為のことですが、もしそうだとしたら、あなたと今まで体を重ねた経験のある女性たちは皆、揃いもそろっておバカさんですね。だってあなたのアレは、とっても美味だから、あんなに美味しいモノが目の前にあるのに食さない(カルピスごっくん!)しないなんて、人生の半分損しているようなものです。ああ、なんてもったいないことでしょう。彼女らが哀れでなりません。それに比べれば私は幸せ者だわ。
12/04 23:10 桜 ~一郎
あまり会わないようにしましょう。電話もメールもおたがいに最小限に控えましょう。この宣言は本気です。今までのような甘い気持ちで言っているのではありません。あなた自身も校長になりたくて、家庭を捨てる気もないのであれば、この私の提案にのる以外方法がないことはよくわかっているはずです。いいかげん子供じみた真似は止めて現実を直視してください。
12/04 23:40 桜 ~一郎
「少しだけ」とか「たまに」とかそういう問題ではないの。私はこれを機会にあなたとの関係そのものを見つめ直したい。なんだか、私最近あなたのことを本当に好きなのかどうか解らなくなってしまいます。「好きだよ」とあなたに囁かれ「私も」と答える自分にいつも疑問を感じてしまうのです。もう一人の私が「本当にあなたは心から『彼のこと好き』と言えるの」とまるで自分を試すかのように頭の中で呟くのです。
12/06 02:15 桜 ~一郎
また、洪水になってしまうようなこと言わないでください。ようやく火照りが落ち着いたのに。今日たくさん気持ちよくしていただいて、ほんとうにありがとう。やはり私はあなたが好き。
12/11 03:50 一郎 ~桜
二度と飲酒運転をさせないと思っていたのに。私の愛し方が足りないのです。もっともっと桜を優しくします。
12/11 04:00 桜 ~一郎
私が勝手にやったことです。あなたに落ち度は何一つありません。昇格の「試験、試験」とそのことばかり口うるさく言ってしまいがちな私ですが、あなたが合格するか否かは、私たちにとって今一番大切な問題なのです。今年限りで定年退職する校長は市内で8人だそうです。チャンスです。あなた自身も不合格になった自分をみたくはないでしょう。
12/13 0:50 一郎 ~桜
今日はありがとう。カレンダーものすごく大切にするよ。うれしかった。今日反省しましたことは、なぜ私は早坂さんを「桜」と呼び捨てにしていたかということです。いつも自分が愛したいときに会い、抱きたいときに抱き、我が儘すぎたようです。早坂さんをあたかも自分の「女」と勝手に思いすぎていました。これからはもっと大切にします。早坂さんが大好きです。今朝、だいぶ怒っていましたが。
12/13 17:50 桜 ~一郎
大丈夫、気にしないで!誰が何と呼ぼうと、私は私。誰のものでもありません。だから気にせず今まで通り「桜」と呼んで。今日あなたが遅くなるようなら素直に先に帰った方がよいですか?部屋であなたのことを思っているだけで満ちたります。
12/14 0:50 桜 ~一郎
あんまり夜更かしせずに、早く体を休ませてくださいね。毎朝目が真っ赤で可哀そうだょ。疲れているんだね。もっと自分をいたわってあげてください。できるならあなたの脇にいてやりたいおやすみ。
12/14 01:50 一郎 ~桜
昨日はもっと強く桜を抱きしめたかった。メールありがとう。おやすみなさい。Chu!勃起。
12/15 0:50 桜 ~一郎
悲しい結末。今日思い知らされたのだけど、ややはりあなたは奥様のことが大好きなのね。ずっとずっと大切で愛していて、でも自分の思い通りにさせてくれなくて、欲求不満がたまってそれで私にはけ口を求めているのね。あなたはただ、身も心も自分の思い通りになる女が欲しかっただけ。本当はあなたが何よりも欲しいのは「夫の言いなりになる真知子」なんだわ。以前からあなたの言動で薄々感じてはいたけれど今日の一言で決定的によくわかりました。可哀そうなあなた。可哀そうな私。 12/15 07:15 一郎 ~桜 君が考えているようなことは妻にはまったく望んでいません。寒いから暖かくしてね!
12/15 23:40 一郎 ~桜
Chu 桜、今日の君との夕食美味しかったよ!デザートは桜のマ〇コで充実しました。次回はもっと大胆なこと要求してください頑張ります。私に元気と勇気づける桜に、早く休んでね。私も夢・夢です。
12/30 21:50 一郎 ~桜
毎日苦しい。早坂さんが大好きです。愛したい。愛したい。 22:10 桜 ~一郎 本当に私のことが大好きで会えなくて苦しいと思うのであれば、どうして今日だってほんの少しでよいから顔を見ようとしないの。あなたはいつも綺麗ごとばっかり。ただの嘘つきだわ。 22:20 一郎 ~桜 悲しいまでに愛したい。早坂さんが大好きです。 23:10 桜 ~一郎 嘘ばっかり。そっちがダメならこっちですか。でもね、あなたがいくら私に「好きだ」「愛している」等と言おうと、あなたが今私の横ではなく、そのお家にいるということ自体が偽りを言っているという何よりの証拠ではないですかか。どうぞ末永くご家族を大切に。
12/31 23:10 桜 ~一郎
昨年の今日と何も変わらない。一年前のクリスマスイブ、あなたが誘ってくれることを期待して、私はいつもよりドレスアップして出勤したものでした。みんなに「今日はパーティ?」等とからかわれましたが、あの日の私はあなたのためにだけお洒落して行ったのです。でもあなたは私からチキンを受け取り、いそいそとお家に帰っていきました。年末年始も私はあなたからの連絡を待ち続けました。でもあなたと顔を合わせたのは年が明けて6日もたってからでした。今年もあなたとは何の約束もしていません。去年から何一つ変わっていない私たち。
1/1 0:30 一郎 ~桜
あらためまして、おめでとうございます。02:50 愛したい 抱きたい 誰よりも誰よりも君に会いたいです。 1/2 01:50 一郎 ~桜 逃げない自分! 今年の目標!それは、逃げない自分を今年一年間で作り上げることです。 13:20 桜 ~一郎 何それ? 誰があんたなんかと4日に会うなんて言ったのよ?私、あんたなんかと会う予定は全然ないよ。4日からは東京の高級ホテルにお・と・ま・りだも~ん♪
あんたなんて何の関係もない! 13:50 ああ、よかったよ。あんたと違ってちゃんと「使いモノ」になる、男としてまだまだ現役のヒトとの蜜月を愉しんできますわぁ~☆ 15:35 ああ、よかったよ。さようなら。ごめんねあんたと違って、ちゃんと「使いモノ」・・・ 19:20 今なら大丈夫なので、早急に電話下さい。
1/3 一郎 ~桜
再び君に! 早坂さん!君が大好きです。大好きです。しかし、今は私の行動一つ一つが君に結び付いて妻に疑われています。今はただ我慢します。行動は伴わないですが、いつも早坂さんが大好きです。
探偵の眼
二人の関係を告発する投書が教育委員会に届いた。教頭は校長昇格選考試験の面接で不合格。女は他校に転職した。不似合いな二人の関係は終息し、夫婦関係は妻の忍耐と寛容で修復に向かった。
読み手が赤面する内容のメールです。女に経験の少ない男が火遊びをすると大やけどする警告の意味で依頼者の承諾を頂いて掲載しました。これは1997年の記録です。
この事務員は本気で正妻の座を狙った感じがします。教頭はつまみ食いのつもりで女に手を出したと思われますが、今までに経験したこともない女の従順さと性技「フェラ」に感激してあっという間に虜になりました。不器用で女に免疫のない男がひくに引けない状況を自らつくってしまいました。結末は、妻と女を苦しめただけの、身勝手でだらしない教頭の責任が問われます。不倫は男女ともに欲望に負けただけでは済まされない清算が待ち構えるのです。今回は中年男の完敗です。
しかし奥さまに、メールを覗き見されたため、家庭崩壊と免職は免れた事件でした。
後日談
依頼者談。「夫と事務職員の不倫がはっきりした時点で離婚の選択でしたが、離婚すると夫と女の思うつぼになるので、そうさせないために夫の定年退職まで仮面夫婦でいることにしました。退職金の半分をしっかりいただきます」とのことでした。女性の思慮は深淵です。夫たちの及ぶところではないです。
後日談 2
教頭と事務員の不倫、「哀れ中年男と性悪女」の表題の投稿を読んだ私の知人の女性から、「女は性悪ではありません。教頭の方がズルいです!」の抗議を受けました。私は、依頼者の妻の立場になって記事を書いたのですが、読者としての立場からすれば、「教頭がズルくて、女心を弄んだ」との意見は理解できるので「探偵の眼」の意見を修正しました。
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