水戸興信所 探偵よろず日記

依頼者 藤田紀夫(65)無職  仮名

※これは事件簿を参考にしたフィクションです。

調査目的
電波攻撃をしている者の正体を暴いてほしい

相談概要
  私が何者かに電波攻撃をされるようになって5年になる。その経過を話します。
 ハウスメーカーの住宅設計部門に勤務していた55歳の時、帰宅途中ホームセンターに立ち寄り、その店で事務用品を万引きした。もちろん万引きなど初めてのことだが、50歳を超えたころから、なんとなく憂鬱になったり、イライラしたり落ち着きがなくなった。仕事に集中できずやる気がでなくなり、何に対しても興味が持たなくなった。夜は眠れず、疲れが取れない。体もだるく、肩こりめまい等で気分も体調も全く不調が60歳で定年退職するまで続いた。

 そのような気分が憂鬱な時期に万引きしたわけだが、自責の念に駆られて仕事も手につかず食事もできなくなって三日目、菓子折りを持ってその店を訪れ、店長に面会、事情を説明し事務用品を返して謝罪した。店長から「今後このようなことはしないように」と注意を受けただけで許してくれた。

 これで呵責から解放されたと思った。
 しかし、それから社内の空気が一変したような気がした。事務員はあちこちで私を見ながらヒソヒソ話をする。上司の態度が威圧的になった。同僚も部下もよそよそしい態度になった。あの店長が万引きの事を会社に通知したのだと思った。

 このように社内から白眼視されて体調は悪化するばかり。定年退職を迎える一年間は事務所内から、ホームセンターの名前や事務用品名、万引き・・などの笑い声や私の名前を誰かが話している声が聞こえるようになった。

 退職したら、家庭内別居を続けていた妻は、遠方の実家近くに部屋を借りて別居を始めた。私がずっと相手ができなかったので、男でも探すため逃げたのだと思う。子どもたちはずっと前に独立して暮らしている。今は一人暮らしで病院通いが日課だ。数年前から身辺に異常が起き始めた。自宅の脇のアパートに新聞屋の配達員が数名住んでいる。10名くらいの男らは早朝、昼間バイクでアパートを出たり入ったりして、私を見張っている。電波も私を宇宙から監視している。私が出かける先を察知してその家に私の悪口や10年前の万引き事件を告げ口するようになった。今まで親しくしていた知人や親せき、バイク修理店などどこへ行っても手のひらを返したようでお茶も出してくれず、「早く要件を言え」と追い返すような態度だ。

 電波攻撃を受けつづけて糖尿病が悪化した。膀胱に電波が通るので1分間に2回チクリ、チクリと痛む。警察に度々行って被害を訴えたが笑って聞くだけで相手にしてくれない。電波攻撃の犯人はあの新聞配達員を束ねている新聞店長だと思う。早く証拠をつかんでほしい。

探偵の眼
 藤田さんのような人が裁判所、法務局、市役所、警察署などをたらい回しされてたどり着くところが探偵事務所らしいです。藤田さんは事務所に来るたび袋一杯の薬を持ち歩いていました。会社員当時からつづいている糖尿とうつがさらに悪化したようです。
 社内から白眼視されつづけ、知人、親戚、馴染のバイク屋からは、同じ悩み事ばかり(自宅の監視と電波攻撃)繰り返し言うため敬遠され、家庭では孤立してストレスがたまる一方でした。「会社内の人が私の悪口を言っている。笑っているのが聞こえる」は幻聴です。「新聞配達員が入れ替わり、俺を見張っている」は、配達にでかけ、戻って休憩して配達先拡張と集金など出入りが多いだけなのです。新聞配達員から見張られていること、電波攻撃の被害は妄想です。

 藤田さんのように「電波攻撃をうけている」という相談は探偵事務所開業以来、年に数件あるのですが、「万引きによる呵責」が原因で心が折れた人は初めてでした。 藤田さんを攻撃している新聞屋グループの証拠調べが終わってから1カ月ほどたって、新聞の「お悔やみ欄」に藤田さんの死が掲載されていました。病死か自殺か不明ですが孤独のまま亡くなって行った藤田さんが可哀そうに思いました。

 万引きによる自責の念は藤田さんばかりでなく、大勢の人が苦しんでいることが分かりました。ネットの書き込みに、「数年前の万引きを謝罪したい。6~7年前高校生の時実行犯の行動を知りながら止めず、盗品と知りながら商品を譲り受けたことがある。近頃報道されている万引きの動画を見ていたらふと思い出し、罪悪感に苛まれています・・。自己嫌悪で何もする気が起きません」とあります。

 藤田さん死亡後知ったことですが、万引きにおける「しょく罪寄付」という制度があり、弁護士会等への寄付で慈善事業のため用いられる。しょく罪寄付は万引きで得た不法な利益を「得たままにせず、きちんと公共のために返還した」という証拠になり有利な情状の一つになります。しょく罪寄付を行うことによって減刑される場合があります。
 このしょく罪寄付は、店長と面会して和解した藤田さんの事例には該当しないことですが、せめて密かに善行や苦行を重ねて罪滅ぼし、償いをして自らを許す知恵があったらば、と悔やまれます。

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